花わさび

 わさび(山葵)といえば、根の部分をすりおろしたものです。一方、花わさびはその名のとおり、花がついた茎の部分です。もともとは利用されていなかった部分だったようですが、今は関西の料亭でよく出されているものになり、この季節になると産地から関西にたくさん出荷されているそうです。私が初めて食べたのは、数年前に大学の先生のお宅を訪問した時でした。作り方も教えてもらいましたので、その後、春になると毎年買っています。
 

(入手編)

 さて、花わさびをどこで手に入れるかですが、ネットでも入手できます。今は、街のちょっとした八百屋さんでも見ることができます。高槻センター街(阪急高槻とJR高槻の間にある商店街)にある天庄という八百屋さんでも売っていました。
 かわいい花がついているのは2月末から4月くらいまでだけで、それ以降は葉わさびになってしまいます。花を食すというのもなかなか趣があると思っています。

 この八百屋さんはアーケード街を阪急側から入って50mくらい歩いて左側にあります。各地のいろんな野菜が揃っており、お店の人もとても親切です。花わさびは山口産と静岡産が有名ですが、もう少し遅い時期には鳥取産が入荷してくると言われていました。

 

(調理編)

 では、どうやって調理するかですが、作り方はとても簡単。まず、軽く水洗いして、適当な大きさにザクザク切って、ボウルの中で塩を少しふってから軽くもんで、その後お湯をかけるだけです。この時のお湯は沸騰したものですと香りの成分が飛びやすくなっていますので、80℃くらいの温度がよいとされています。1分ほどお湯をボウルに注いて、それからお湯を切ります。


塩をかけて軽くもんだ後、さっと水洗いをして、お湯をかけます。温度は80℃くらいが適当。

1分くらいでお湯を切った方がよいと思います。

 お湯を切った後、花わさびをタッパに入れ、砂糖、醤油、日本酒、(そして私はだしの素を少しふります)を加えて、フタをして置いておくと、3時間くらいすると化学反応が起きて辛味が出てきます。タッパを開けて鼻を近づけた時の、あのツンとした香りがたまりません。


あとはタッパに入れて、しばらく冷蔵庫にでも入れておけば、辛味がでてきます。

出来上がり。ご飯にのせるのもよし。お茶漬けでもよし。そのままお酒のつまみでもよし。

 ところで、わさびの独特の香りと辛味はどうやって出てくるのでしょうか?
花わさびを生のまま食べても苦味があるだけです。実はわさびの辛みは、アリルイソチオシアネートという成分で、細胞内にあるシニグリンという物質が、すりおろすことによって細胞が破壊され、細胞内にある酵素と化学反応して生成されるために出てきます。鮫皮のおろし器がわさびで使われるのは目が細かく、上記の化学反応がよく起きるからです。また、化学反応が起きていますので、金おろしもよくないといわれています(微量の金属イオンが触媒的に作用するためでしょうか)。
 わさびの成分は揮発しやすく、また分解もしますので辛味が長続きしません。お刺身の通の食べ方は、わさびを醤油に溶くのではなく、わさびをお刺身に少しのせ、醤油がかからないようにすることだそうです。
 市販のチューブ入り練りわさびがありますが、これはわさびに似た辛味をもったわさび大根を着色したものがほとんどです。原料に本わさびを50%以上含んでいるものは、「本わさび使用」と表示でき、それ未満の場合は「本わさび入り」と表示されます。

 私はわさびの他に生姜やゆず胡椒、山椒も料理をうまく引き立たせる薬味として好きです。しかし、同じ辛さでも、唐辛子のようなカプサイシンが強いものは少々苦手です。ただし、柚子胡椒は唐辛子が主成分ですが、鍋ものには使います。薬味は料理の主人公ではありませんが、実は、とても奥が深いと感じています。

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